今野敏さんの『天を測る』を読みました。
咸臨丸で太平洋を渡りサンフランシスコまで航海したと言うのは有名な話しです。
それに艦長?の勝麟太郎(勝海舟)は船酔いで自室から外に出れず、太平洋の真ん中で日本に帰るという我儘を言うというのも有名な話しですね。
実際に操船したのは、アメリカの航海士ジョン.M.ブルックとその部下の人たち。
アメリカから日本に港の測量しに来ていて、江戸湾に係留中に指揮していた艦艇が台風で座礁沈没。
咸臨丸の太平洋横断に便乗と言う名目で乗船したのですね。
咸臨丸には優秀な日本人がいました。
小野友五郎という人物です。
彼は先進技術を身につけており、太平洋航海に多大な貢献をしています。
帰路は日本人のみで操船しています。水夫なども往路で実践航海を習得したのですね。
この歴史小説は、テクノクラート小野友五郎の生涯を描いています。
幕末期から薩長政権への移行後の明治までの小野友五郎は、江戸幕府だとかそういう視点では無く日本の将来のために何を今成すべきかを考えています。
今野敏さんと言えば、警察小説ですね。
隠蔽捜査シリーズの竜崎署長(最新作では神奈川県警の刑事部長ですね)と小野友五郎とが、私には同一人物のように思えました。
生きていく上で面倒な部分を削ぎ落とし、物事の本質だけを見つめ、そこから解決策や対応を考えるという発想です。
私など、周りの人の顔色を伺いながら、嫌われ無いように、目立たぬように、生きている小心者には憧れの人物です。
ちなみに、小野友五郎については古い本になりますが、中公新書から出ています。
藤井哲博著『咸臨丸航海長小野友五郎の生涯 幕末明治のテクノクラート』(昭和60年10月、中央公論社)
絶版になっているようで図書館に行くしか無いですかね。
言って頂ければ、私のをお貸し出来ますけど。
長くなってしまいましたけど、幕末に多くの能力のある幕臣がいて、彼らは江戸幕府と言うような判断基準では無く、日本の将来を考えて欧米からの脅威に対抗しようとしていたのです。
薩長政権は人材が少なく、多くの幕臣が政府で活躍していることも事実です。
小栗上野介忠順が理由もなく斬首されず、薩長政権の中で活かされていたら、違った世の中になったかも知れませんね。
長文になってしまいました。
最後までお付き合い頂いた奇特な方がいらっしゃいましたら、感謝申し上げます。
本当にすいません。
小栗上野介忠順や小野友五郎などを語ると思わず熱くなってしまうもので。
2021年8月29日(日)